あたしの彼はご主人さま -1

「あ、あくっ。うん、ああっ」
 息苦しさに思わず口を離すと、すぐに髪をつかまれてねじこまれた。歯を立てないように大きく口を開ける。乱暴にのどの奥を突かれると吐き気がした。でも吐き出すことはあたしには許されていない。
「ほら、ちゃんと咥えろ」
 命令されるままにつるんとした表面に舌を這わせる。唇を締めるようにして首を振り、くびれの部分をこすると、彼はうっとうめいた。
「よしよし。だいぶん巧くなってきたな」
 荒い呼吸で言いながら彼が頭を撫でてくれる。褒められたのが嬉しくて、あたしはもっと首を激しく振った。顔をねじるようにしてひねりを加えながら、舌の裏のやわらかな部分で先端をにゅるにゅるこすると、彼のものがびくりと震えた。
「出すぞ! 飲めよ!」
 彼の言葉と一緒に、クリトリスに押し当てられているローターの振動が強くなる。頭の中がちかちかする。彼があたしの頭をつかんで、まるであそこに挿れているときみたいに激しく突き上げた。のどにまで入らないように必死で口をすぼめて強く吸い上げた瞬間に、彼のものがしゃくりあげるようにびくびくと大きく震えた。
「う、く、うおっ!」
 低く抑えられた彼の声と一緒に、苦くてどろっとした液体が何回も口の中に叩き出された。吐くと怒られることはわかっていたから、必死で飲み込もうとしたけれど、生臭い彼のミルクはいつもなかなか飲み込めない。あそこのローターが凄く気持ちよくて、あたしを喘がせようとする。口を開いたら彼のミルクが出ちゃう。そんなことしたら彼がどうするか、考えただけでぞくっとする。ちゃんと飲まなきゃ。
「はあ、はあ、はあ」
 彼が早くも呼吸を整えようとしているとわかって、口をすぼめたままゆっくりと彼のものから離れた。彼のものとあたしの口のあいだがてろっと伸びた糸で一瞬繋がる。
 一回出したくらいで彼が満足してくれる筈もなく、目の前のそれはあたしの唾液でぬらぬらといやらしく光りながら、赤黒くそそり立っていた。普段は優しい彼を否定するみたいに、グロテスクでたくましい。
「ちゃんと飲んだか?」
 伸びてきた手に前触れもなくあごをつかまれて、無理やり上を向かされた。照明で影ができていて彼の表情は見えないけれど、その口元が残酷に歪んでいるのはわかった。彼のその笑みの理由もわかっていた。
「う、うう」
 なんとか飲み込もうと努力しながら頷くと、彼はにやりと笑った。
「嘘をつくな」
 ぴしゃりと手のひらで頬を叩かれて、口の中に残っていたのを吐き出してしまった。飛び散った白い液体がシーツに染みを作る。おそるおそる目を上げると、彼は低く笑っていた。イジめられる予感にぞくりとする。彼は、あたしが飲むのが苦手なのを知っていて、わざといつも口に出して、そして言いつけを聞かなかったとあたしをイジめて遊ぶ。
「ちゃんと全部飲めって、いつも言ってるだろ!」
「ああああーっ!!」
 彼が手の中のリモコンを操作したらしく、あたしのクリトリスにばんそうこうで貼り付けられたローターのうねりが最大限にまで大きくなる。強い痛みと快感に耐えられず、後ろ手に縛られて髪をつかまれて膝立ちをしたまま、あたしは大声を上げていた。
「い、ああ、いやぁ、あああー!」
 よだれと彼の放ったものが混じった液体を口の端から垂らしながら、あたしは胸をそらして身体をよじって腰を振った。あそこからとろとろといやらしいジュースが出ているのがわかる。
「あああ、ダメ! もうダメえー!!」
「イきたいならちゃんと『ご主人さまイってもいいですか』って訊けよ。勝手にイったらお仕置きだぞ」
「ご主人さまっ。イっていいですか? イかせてください!」
 彼に命じられるままにあたしは叫んだ。もう耐えられない。
「本当に、おまえは簡単だな」
 呆れたような意地悪な声にぞくぞくする。
「はい、イきます。千紗は千紗は、もうイきます!」
 あそこがひくひくする。気持ちいい気持ちいいっ! ああ、もうちょっと……ッ!
「ほらよ。イけ、淫乱猫のチサ」
 彼の指がぐちゅぐちゅに濡れた中に入ってきた。乱暴に二本の指で掻き回されると、にゅぷにゅぷと凄くえっちな音がする。手前の壁の、一番気持ちのいいところを強く圧すようにこすられて、身体がぶるぶる震えた。ローターと指がすごい。どっちもいい。気持ちいいっ!
「あああッ! ご主人さまああッ!!」
 彼の指とローターに擦り付けるように腰を振りながら、あたしは大声で叫んで、そして何回もイった。





 あたしと彼も、最初は普通だった。
 出会ったのはクラブの先輩に連れて行かれた合コンだった。普通よりちょっと高めの背をかがめるようにしてこんばんはと笑うと、左の頬に小さなえくぼが出た。ユーキさんとみんなに呼ばれていた。物凄くカッコよかったって訳じゃないけど、でもなんか可愛い感じで、なんとなくいいなと思った。
 彼は先輩の友だちの先輩ということで、頼まれて数合わせとして来ていただけだった。大学生ばかりの中で、唯一の女子高生という立場だったあたしを面白がってからかってきた。
 年齢は五つも違ったし、あたしには隣のクラスの彼氏もいたし、だから最初は彼にそんな気持ちはなかったけれど、二日に一度は電話をかけてきてくれて毎日メールしてくれて何度も誘われたことから、なんとなく遊びに行くことになった。
 三回目のデートのときに物凄く上手いタイミングでホテルに誘われて、お酒の入った勢いとそのときのムードで、ついうっかり頷いてしまった。本当は彼氏がいるのにこれじゃ浮気だと思ったけれど、でもそのときのあたしにとっては彼氏のことなんてどうでもよくなってしまっていた。
「綺麗だよ。千紗ちゃん」
 別々にシャワーを浴びたあと、少しだけ灯りを落とした部屋で大きなベッドに並んで座ると、彼は手を伸ばしてきた。指先で弾かれてバスタオルがはらりと落ちる。手馴れてるなと思ったけど、でもなんだかいつもと違って新鮮だった。
「やだ。見ないで」
「なんで。こんなに綺麗なのに」
 言いながら彼はあたしを抱き寄せた。触れるだけのような軽いキスを何度も繰り返しながら、彼の手が肌をゆっくりと滑る。少しひんやりとした感触が気持ちいい。
「でも、あたし、胸ちっさいし。足もあんまり細くないし」
 キスの合間に息継ぎをしながら言うと、彼は眼を細めるように笑った。
「すごく可愛いよ。俺はこういうオッパイのほうが好きだな」
「あ、ん、んーっ」
 手のひらで擦るようにやわらかく左の胸を揉まれた。爪先で胸の先を引っ掻くように弄ばれて身体が震えた。
 合わせた唇のあいだから彼の舌が入り込んでくる。いやらしい音を立てて舌を絡められた。深く侵入してきた舌を吸い返しながら流し込まれた唾液を飲み込むと、強く乳首をつままれた。つーんとした快感が背を貫く。
 痛い。ちょっと痛い。でも、気持ちいい。
「敏感だね、千紗ちゃん。もう乳首勃ってきてる」
「やだあ。そんなこと言わないで」
 でも気持ちいい。指先でくりくりつままれると、びくびくしてしまう。
「ホント、可愛い」
 ちゅ、ちゅ、と音を立てながら、彼はあたしの胸に口づけた。長く伸ばされた舌がゆっくりと円を描いて、あたしの肌にぬるりとした跡をつける。
「あ、あん」
 もうすでに赤く腫れて、敏感になってしまっている乳首を強く吸い上げられた。彼の手がわき腹を通ってふとももまで滑り降りる。逃げることも抵抗することもできないままに、脚の付け根に彼の指がそっと当てられた。こするように触られて、びくびく震えてしまう。
「千紗ちゃん、もう濡れてるよ」
「うそ、ちがうもん」
「嘘じゃないよ、ほら」
「ちが、あたし、あうんっ」
 でもどんなに否定しても、彼の指でなぞられるとあたしのあそこはにゅちゅにゅちゅといやらしい音を立ててしまう。自分でも信じられないくらいに溢れてた。とろとろと流れ落ちているのがわかる。
「すごいよ。シーツに垂れて糸引いてる。いつもこうなの?」
「ち、ちがうの。いつもはこんな、ああんっ」
 指を擦り付けられて思わず声が出る。
「いつもは違うの?」
「だって、彼氏は、不感症なんじゃないかって、あ、くぅっ」
 彼の指先がすごくイイところをこすった瞬間、身体が痙攣した。多分、クリトリスに当たったんだと思う。そんなに詳しいわけじゃないけど、誰だって名前くらいは知ってる。恥ずかしいから口には出せないけど。
「こんなに濡れ濡れなコが不感症なわけないじゃない。クリもピンピンだよ」
 浅いところを抜き差ししながら、彼は敏感な小さなボタンを軽くつんつんと突付いた。耳のくぼみをゆっくりとえぐるように舐めながら、左手で胸全体を揉んでつまんで、そして時折、爪先で乳首を弾く。
「あ、あくっ、ああううっ!」
 痛みと快感が交互にあたしを攻める。今まで感じたことのない気持ちよさに、あたしはパニック寸前だった。

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