あたしの彼はご主人さま -8

「なんだ、まだ何もしてないうちから。糸引いて垂れてきてるぞ」
 くすくす笑いながら彼は指をゆっくりと突き入れた。ひっかかりもなくずぶずぶと奥まで入って行く。そのぬるぬるした感触から、彼の言葉が本当だとわかる。
「い、ああっ。や、いやっ」
「乳首だけでこうか? それともチンポしゃぶって感じたか? どろどろだぞ」
「ちがっ、違います。あたし、そんなんじゃ……あ、あん、あうぅっ」
 入り込んだ指がぐいぐい突いて、そしてタイミングをずらして、ちゅくちゅくと掻き回す。突かれてこすられて掻き回されて、あたしのあそこからはもう言い訳のしようのないほどの量のジュースが流れ出ていた。伝って流れて行くのがわかる。
「じゃあ、何でこんなにぐちゃぐちゃになってんだ。ん?」
 彼の愉しそうな笑い声が広げられたあそこにかかる。彼が見ているんだと思うと、恥ずかしくて身悶えしそうだった。
「い、いや、ちがっ、ああんっ!」
 じゅぶっと音がしたのと同時にあたたかい舌が吸い付いた。舌先でぞろりとクリトリスを舐め上げられて、逃げるように彼の口にすりつけるように、腰を振ってしまう。
「あ、やあ、うくっ、ううっ、あああんっ!」
 びくびくと、まるで電気を流されたカエルのように脚が震えた。
「だ、ダメ、やあっ。あうぅっ!」
 舐められて、舌先で叩くように突付かれて、指で突かれて奥まで掻き回されて、気持ちいい、気持ちいい、気持ちいい……ッ!!
「あ、あああ、うあうっ、くう、あ、はぁはぁ、あうんっ!!」
 狂っちゃいそうなくらいに気持ちよくて、こんなのもう、もうっ……!
「イくか?」
 どこかから笑みを含んだ声が聞こえる。何も考えられないまま、あたしは叫んだ。
「はい、千紗はもうイきますっ」
「よし、いいぞ。何回でもイけ。見ててやる」
 そう言うと、彼は指を一度引き抜いて、そして二本に増やしてからずぶりと突き込んでくれた。ぐちゅぐちゅと出し入れしながらクリトリスになにかを当てた。虫の羽音と一緒に、弱くて深い振動があたしを揺らして、その瞬間、身体がびくんと震えた。
「いやっ、イくっ!」
 背をそらしてのどをそらして、手錠をかけられた腕を震わせて、あたしは跳ねた。痙攣のように震える。意識が白く染まる。それでも彼の手も振動も止まらない。空中に放り出されたような感覚に、何を言ってるのか自分でもわからないまま叫んだ。
「う、ああ、ダメダメ、あああっ! いや、またイく、イっちゃう! イくっ!」
「なんだ。そんなにローターが好きなのか」
 くすくすと彼が笑う声が遠くから聞こえる。
「なら、たっぷり味わえ」
 その途端、音が変わった。それと同時に電流に撃たれたような痺れが全身に走った。あたしが破裂するかと思うような爆発が頭の中で繰り返される。
「い、あああっ! あ、ああ、あああっ!!」
 この前にも経験した、快感の上の嵐がそこにあった。怖いほど気持ちいい暴風が巻き上がっていて、あたしは呆気なくその流れに飲み込まれた。意識がもみくちゃにされてバラバラにちぎれていく。
「あああイくイく! またイく!! ああっ、もうダメっ! ダメっ、イくっ! またイくうっ!! イくイくぅっ! ああ、助けて! もう、もうっ、ああっ、イくううっ!!」
 びくびくと汗まみれの全身を震わせて、背をそらせて身体をくねらせて、あたしはのどを嗄らしながら絶叫し続けた。


 そのあと、彼はあたしを紐で縛って、レイプするみたいに乱暴に抱いた。許しを請うあたしを押さえつけて、完全に気を失うまで何度も無理やりイかせた。
 目が覚めたときは全裸でバスタオルにくるまれていて、同じように裸の彼に抱きしめられていた。あちこちが、特にあそこがヒリヒリして痛かった。ご主人さまと呼ぶと、彼は泣きそうな目で笑って、そして優しくキスしてくれた。

 こうして、彼とあたしの関係は歪んだバランスで安定した。
 彼はご主人さま。あたしは奴隷。彼はあたしをイジめて愉しむ。あたしは彼にご奉仕して気持ちよくしてもらう。
 普通じゃないけど誰にも言えないけど、でも二人ともとても幸せだった。





「いつまで寝てるんだ!」
 ローターでイったあと、シーツに倒れこんで名残の快感にぴくぴくしていると、乱暴に引きずり起こされた。真正面にしゃがみ込んだ彼の手が伸びてきて、あそこに貼り付けられていたばんそうこうを容赦のない手つきで引き剥がした。
「きゃああっ!!」
 ばりっと音がするのと同時に襲ってきた焼けるような痛みに、あたしは思わず悲鳴を上げた。押し付けられていたローターが糸を引きながら、脚のあいだにころんと落ちた。
「随分抜けたなあ。いっそ全部剃ってやろうか?」
「ひ、酷いです、ご主人さま」
 彼は、あたしの恥ずかしい毛がいっぱいくっついたばんそうこうをひらひらさせながら笑った。でも、あたしにはそれが酷い仕打ちだけだとは思わない。三ヶ月足らずのあいだに、あたしの身体はすっかり彼に馴染んで、彼から与えられる快楽と苦痛に溶けてしまうようになっていた。
「ほら、後ろ向いてケツ上げろ」
「ふ、ふわぁい」
 ぱちんと叩かれて、涙目のまま慌てて四つん這いになる。肩と頬で身体を支えてお尻を高く上げると、大きな手が割り裂くようにつかんで大きく広げた。彼は後ろ手に縛られたままのあたしの腕をつかむと、体全体を引き寄せるように強く腕を引っ張りながら、ローターでは満たされ切らなかった部分にずりずりと入り込んできた。
「う、うう、あくっ!」
 挿れてもらったすぐは、すごくキツくて苦しい。でも痛いのも苦しいのも気持ちいい。ぐいと押し込まれただけで耐え切れない声が出てしまう。
「はぁ、はぁ、はぁ、あくうっ」
 背伸びする猫のようにシーツに胸をこすりつけるようにして喘ぐと、彼のが中でビクビクって震えた。彼が感じてくれてるってわかる。
「いいぞ、千紗。締まる」
 褒められたのが嬉しくて、あたしは腹筋に力を入れた。そのままお尻を左右に振って、中の彼のをしごく。彼のためにしてることだけど、あたしも気持ちいい。自分で動くのってご奉仕してるって感じで、屈辱的で恥ずかしくて、そんな様子を後ろから見られてると思うと、あそこがびくびくする。
「いいぞ。いやらしい眺めだな、この淫乱メス猫」
「ああ、恥ずかしい……恥ずかしいです、ご主人さま」
 それでもはぁはぁと喘ぎながら、あたしは腰を振り続けた。
「いやらしいケツだな。そんなにいいのか?」
「そんなあ……。ああ、でも、気持ちいいですっ、あ、くううっ」
 ぐいと手を後ろに引っ張られて、上半身を起こされた。角度が変わったせいか彼のが当たる位置がずれた。前のほうのすごく感じる部分が圧迫されるようにこすれる。同時に乳首を強くつままれてひざが痙攣した。
「ああっ! はあ、はあっ、うあっ、あ、あああっ!」
 つかまれた腕に全体重を預けて、あたしは素早くお尻を左右に揺すりながら、動物のように喘いだ。彼のがすごくて、ぴくぴくしてしまう。イきそうだけど、許可なくイくと酷い目に遭わされるのは今まで何度も経験してわかっていたから必死で耐えた。
「なにがいいんだ。言ってみろ」
「ご主人さまの、おっきいのがこすれて、それがすごく気持ちいい、です」
「おっきいの、じゃないだろ! ちゃんと言え!」
 ばちん、と強い力でお尻を叩かれた。手の跡が赤く残ってしまいそうなくらいの痛みに、反射的にきゅっと締めてしまう。その瞬間に強く奥まで突かれて、あたしは軽くイってしまった。
「あ、くうっ!」
 意識が白く染まって、びく、びくびくびく、とあそこが痙攣するように彼のを食い締めた。あたしがイったのに気づいた彼は、手を伸ばしてクリトリスをイジってくれた。指先で円を描きながら腰を叩きつけるようにずんずん奥まで突いてくれる。一瞬で終わりかけた快感が盛り返して、さっきよりも大きなうねりになってあたしを飲み込んだ。
「ひっ、ひゃあっ! あう、あうぅー、あああぅッ!」
 ひざがガクガク震える。彼に突かれてぐらぐらと揺れながらも、がっちりとつかまれた腕のせいで、反動をどこにも逃がすことができない。
「このメス猫め。勝手にイっていいと誰が言った!」
「あああ、ごめんなさいぃぃーー!!」
 彼の動きに併せて腰を振って、奥の奥まで突いてもらう。胃に食い込むくらいに強く押し付けられて痛くて苦しくて、でもすごくすごくいい。
「ああっ、イきます、ご主人さま! 千紗はまたイっちゃいます! ごめんなさいごめんなさい、あああ、イきますっ! イくイく、イくぅうっ!!」
「千紗、あとでお仕置きだからな!」
 彼の恐ろしい宣言を聞きながら、あたしはあそこからタラタラとジュースを垂れ流して、狂ったように腰を振って、咥え込んだ彼のをギリギリ締めて、何度もイった。彼がずんずん突いてくれて、本当に狂うかと思うくらい気持ちがよかった。

 これからもずっと、あたしはこうやってご主人さまに可愛がってもらえるんだ。奴隷としてメス猫として、可愛がってもらえるんだ。嬉しい、うれしいよぉ。
 そう思いながら開きっぱなしの口からよだれを垂らしながら、あたしは発情期のネコのように声を上げて彼から与えられる快感に身体を震わせ続けた。

   -おわり-
2005/01/07
  おまけのあとがき
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