この指を伸ばす先-7

「理香、そろそろこっちもよくなってきたか?」
「や、だ……やだぁ……」
 照れ隠しにわざと揶揄する亮治に理香は恥ずかしげに首を振る。けれど理香の思いとはうらはらに、繋がった部分からぐちゅぐちゅと湿った音が立つ。亮治に応えるように内部がひくりと震える。そんな理香の反応に、亮治は徐々に普段の余裕を取り戻していた。
「いやじゃないだろう? いいんだろう?」
 言葉でなぶりながら亮治は円を描くように腰を回した。理香の壁にこすりつけるように細かく突いて敏感なスポットを探す。
「あっ! あ、ん、んんっ」
「ここか?」
「あ、んん……は……ぁっ」
 くいと軽く突き上げると亮治の下で小さな身体が驚いたように震える。その反応を楽しみながら、亮治は先端をすりつけそしてゆっくりと引いた。引き抜かれる感覚に理香が切なく声を上げる。頼りなげに薄く開いた唇が亮治をそそった。
「ここだな? 気持ちいいか?」
 上半身を倒すように理香に覆い被さると亮治は小さな唇を塞いだ。侵入させた舌で口内をまさぐり唾液を流し込みながら、腰を密着させるように揺さぶり続ける。
「んっ……、ん、んんっ」
 流し込まれた唾液を飲み切れず、開いた唇の端からヨダレのように垂らしながら、理香は焦点の定まらない虚ろな瞳をそっと開けた。潤んだまなざしを自分を組み敷いた男へと向ける。
「あ、はぁっ……せんぱぁい……」
 理香が喘ぐたび震えるたび、理香の内部も同調して震える。ねっとりとうねるように絡みついてくる熱い襞に亮治も知らず知らず息を乱す。乱暴に突き込みたい気持ちをぐっと抑え込み、亮治は表情を変えないまま穏やかなピストン運動を続けた。
「理香、どうして欲しいか言ってみろ。してやるから」
「や、だぁ……っ、あ、あっ」
 羞恥に頬を染めながらも理香は無意識に腰を振り、ねだるようにひくひくと亮治を締め付ける。けれど亮治はそれに気付かない顔で緩やかで単調な動きを繰り返した。じりじり侵入し、そしてゆっくりと引き抜く。その物足りなさに身悶える身体を押さえつけるように右脚を抱え込んで圧し掛かり、ふとももの下から続くやわらかく丸みを帯びた尻をぱちりと叩いた。
「ほら、どうして欲しいんだ」
「だって、だって……あっ……あ、やぁっ」
 いやいやと顔を振る理香の様子をおもしろがるように低く笑いながら、亮治は時間をかけて奥まで侵入し、そして動きを止めた。最奥を軽く二度突き、そのままで停止する。
「やぁっ、先輩。お願い、ねぇ……」
「だから、何がだ」
 平然を装った亮治は浅く早い抽送を立て続けに行い、理香の声が切羽詰ったように高まると緩やかな腰遣いに戻す。眉をひそめ細い息を吐く切なそうな表情にわざとのように優しく微笑みかける。
「どうして欲しいのか言わないと、俺にはわからないぞ」
 言いながら強く突き上げ、理香が声を上げるとゆるゆると引き抜く。焦らすことだけが目的の亮治の攻撃に耐え切れず、理香は上半身をくねらせるように腰を振り始めた。さしたる刺激にはならないがそれでもないよりはましと、自ら快楽を紡ごうとする理香に低い笑みが降りかかる。
「どうした、理香。じっとしてろ」
 楽しそうに低く笑いながらペチペチと音を立てて尻を手のひらで叩き続ける。屈辱そのものとも言える亮治の行動に、理香の理性もぶつりと切れた。
「やあっ! もう、やだっ!」
「もう、なんだ?」
 泣き声に近い叫びに亮治は目を細めた。
「せんぱい……おねがい、もう、あたし、もう……っ!」
「イきたいか? イかせて欲しいか?」
 亮治を見上げる、涙の浮いた瞳が揺れる。戸惑うように一度だけ視線をさまよわせ、けれど理香はあごを引くように頷いた。
「イきたい……イきたい、ですっ」
 その瞬間、亮治は胸の内で勝利を確信した。
 全てが自分の思うままに成りつつある。それを思い亮治は頬を歪めた。涙の跡の残った頬を軽く唇で拭いながらゆっくりと腰を引く。
「よしよし。おまえは可愛いな」
「ん、あぁっ!」
 のけぞる身体を押さえつけ一気に突き込む。今までの理香への、そして自分への焦らしを全て払拭するかのように激しい抽送を始めた。直接触れ合った粘膜が擦り付けられねじ込まれる感覚に耐え切れず、理香は悲鳴を上げた。肌が打ち合う音と卑猥な水音、そして理香の嬌声が部屋全体に響き渡る。
「あっ! あっあっあっ! やああ……ぁっ!」
 焦らされ続けていた理香にはひとたまりもなかった。あっという間に押し上げられ全身を震わせる。のどを反らせ背中を浮かせて痙攣する理香に構わず、亮治はリズミカルな動きを続けた。
「やっ、せんぱ……だ、め……」
「何がダメなんだ?」
 逃げようとする理香の腰骨の辺りを両手で押さえつけると、亮治は上体を起こすように突き上げた。ポイントを攻められる苦痛にも似た鋭い快感に、息を詰まらせ苦しげに首を振る。
「あっ、や、ああ……っ! またイっちゃうっ」
「何回でもイけばいい。イきたかったんだろう?」
 理香の腰を押さえつけていた右手がするりと内側へ落ち、亮治を受け入れている部分をなぞった。花びらを濡れ光らせる蜜を指に取り、赤い小さな突起を軽く押さえる。腰のリズムと合わせて、亮治はゆっくり指を動かした。
「ほら、イけよ」
 叩き付けるような激しい腰の動きとぬるぬると触れる優しい指の二重の攻めに、理香が再び陥落する。
「やぁっ! あっ、ああっ、あっあっあっ……ああっ!」
 苦しそうに眉が歪み、固くつむった目じりからひとすじの涙が流れる。亮治の思うがままに揺らされ、息をすることもままならない快感に理香はしなやかに背をそらした。
「や、あっ……イく、ぅっ」
 理香が絶頂を極めるたび、その内部が細かく震えながら収縮する。間を置かず攻め立てながら亮治は強く眉根を寄せた。胸をそらせてのけぞりながらも理香の内側は亮治を搾り取ろうとするかのように、吸い上げ絡みつき締め上げる。
「ぅ……くっ」
 思わず低くうめき、理香を押さえつけるようにして亮治は引き抜いた。大きく脚を開かされ濡れそぼった秘部を亮治の前に晒したまま、理香は絶頂の余韻にひくひくと全身を震わせる。荒い息を吐きながら亮治は細い腕をつかみその身体をひっくり返した。
「あっ、やぁ……ん」
 引き抜かれた折の衝撃に身をくねらせながら、理香は亮治の手に導かれるままシーツに這った。ひざを肩幅より少し広めにつき、高くお尻を上げる。
「いやらしい格好だな、理香」
 わずかながら余裕を取り戻した亮治は小振りのヒップを手のひらで撫でた。やわらかな肌の感触を楽しむようにゆっくり大きく上から下へと手を滑らせる。ふとももの付け根までを辿るとそのまま内側へと入り込み、秘所を大きく指で開いた。現れた鮮やかな濃いサーモンピンクの中心に、てらてらと濡れ光る自身にを押し付け、そして一気に奥まで進んだ。
「あ……んっ、あ、んんんっ!」
 反射的に背を反らせた理香のひくつきをじっくりと愉しみ、そしてゆっくりと抽送を開始する。
「あっ、んっ、は、はぁっ」
 後ろから突き込まれながら、誰かに助けを求めるように理香は指先に触れたシーツをつかんだ。無意識のうちに腰をくねらせ、亮治に協力して更なる快楽を紡ぎ出す。いつのまにか半開きになっていた口から、切ない喘ぎと共にヨダレが滴り落ちた。
「理香。本当にいやらしいぞ」
 淫らに身悶える上半身を後ろから眺めながら亮治はのどの奥で低く笑った。自らの動きに連れてやわらかく揺れるふとももの内側を軽く叩く。
「もう少し脚を開け。クリをイジってやるから」
「あ……、ふ……ぅん?」
 言葉の意味を理解しないまま、けれど理香の身体は亮治の命じるように右ひざの位置をわずかに外側にずらした。さらに誘うように腰を振り、首をねじって振り返る。快楽に解けた熱く潤んだ視線が肩越しに亮治を見つめた。
「せん、ぱ……んっ、くぅっ」
 無言のまま大きく開いた脚のあいだに手のひらを差し込むと、亮治はその付け根に指を這わせた。花びらから滴り落ちる蜜をたっぷりすくい取り、痛々しく勃起した肉の珠に塗り付ける。軽く押さえ、円を描くように優しくこねる。第二関節から先を細かく曲げるようにして振動を送り込む。
「あ、あぁっ、ん……ん、あ、はぁっ、あっ……あっああっ」
 あごを上げるように背を反らせ、理香はすすり泣きにも似た喘ぎ声をこぼす。再開された抽送に痙攣するように腰を跳ねさせながら亮治を締め付ける。複雑に入り組んだ内側に先端を包むようにぬるりとこすられて、亮治は思わず息を詰めた。一瞬の身体の停止のあと、先ほどの自分の反応を否定するかのように、一気にそのスピードを上げた。
「やぁっ! ん、あっああ……はっ、あああ……っ」
 肌を叩きつけるような激しいピストンと敏感なクリトリスへ与えられる刺激の二重奏に、理香はひときわ大きくぶるりと身体を震わせた。
「や、やぁ……っ! イくイくイくぅっ!」
 突き上げられるたびガクガクと前後に揺れる全身をかろうじて支えていた両手が、執拗な陵辱に耐え切れず崩れ落ちる。それでもひざを立てたまま腰だけを高く上げたまま理香は容赦なく犯され続けた。
「あっ、ひ、は……ぁっ! あ、あ、あああ……っ!」
「理香っ!」
 シーツに頬を押し付けられたまま、言葉にならない喘ぎを上げ髪を振り乱し絶頂に狂う理香に覆い被さるように片足を立てて圧し掛かると、亮治は突き破らんばかりに激しく攻め立てた。穿つたび引き抜くたび、甘い悲鳴を上げながらやや細身のボリュームの足りない身体が卑猥に身悶える。その内側は犯されながらも絞り上げるようにぬるぬると絡みつき、亮治を限界へと誘っていた。熱く溜まってきた快感に低く息を吐き、亮治は強く眉をひそめた。
「理香、そろそろ……出すぞ」
「や、中はダメ、いやっ」
 亮治の言葉に理性を戻した理香が逃げようと身をくねらせた。亮治はその動きをふとももを片手で押さえつけて一旦封じ、さらに素早く右ひざを外側に叩いて位置をずらせることで下半身のバランスを崩させ完全に組み敷いた。
「やっ、やだぁっ!」
 強引な亮治の行為に、理香がシーツに突っ伏したまま半泣きで叫ぶ。けれど亮治は聞く耳のない顔で圧し掛かり激しく打ち付けた。
「やだっ! 先輩、お願い、やだぁっ」
「出すぞっ」
 吐き捨てるようにそう一言叫ぶと、亮治は一気に抜き取り高く上がったままの理香の尻を抱き寄せた。そのまま乱暴に身体をひっくり返し、喘ぐ口元に強く握りしめたペニスを突きつける。
「咥えろ!」
「え、あ、ん、んんっ?」
 状況の変化に混乱した理香のあごをつかむと強く引き寄せ、有無を言わせずその隙間にねじ込む。乱れきった理香の髪をつかむと激しく抜き差しを始めた。
「ん、んんっ……ん、ぐ……く……っ」
 乱暴に口を使われながらも、亮治が自分の願いを聞き入れてくれたことを理解した理香は、男のものに右手を添えて舌を使い始めた。荒い息を吐き腰を揺らしながら冷徹なまなざしを落とす亮治を誘うかのように、上目遣いで敏感な穂先に唾液を塗り付け、舌先で溝をなぞる。強く吸い上げやわらかな舌の裏側をこすりつける。すでに限界ギリギリの位置に気力だけで留まっていた亮治は、理香の口技にあっという間に追い詰められた。乱暴に後頭部をつかみ、女性器にそうするようにぐいと最奥にまで叩き込んだ。
「う……くっ」
 強い腕に頭を抱き寄せられ奥まで突きつけられた理香が、湧き上がってきた吐き気を堪えるように、のどの奥でぐうっと唸る。直接触れた先でその微妙な振動を感じた亮治は全身をびくんと震わせた。
「理香っ」
 叫ぶような声とほぼ同時に、叩き付けるような勢いで亮治の精が吐き出される。こみ上げる吐き気と戦いながら、理香は口の中でびくびくと震え傍若無人に苦い体液を撒き散らす亮治に必死で奉仕を続けた。
「……っく、う、うっ」
 射精直後のひどく敏感になったペニスを熱い舌にぞろりと舐められ、亮治は耐え切れず低く快楽の声を漏らした。引き寄せた頭を優しく撫でながら、理香の口の中を存分に味わう。深く息をつくとゆっくり抜き取り、そして再び理香を押し倒した。
「えっ、あ……っ?」
 ひくりと震える腰を鷲づかみにして強く引き寄せると、亮治はにやりと笑った。
「さあ、二回戦だ」

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