マスカレイド-5

「そろそろ効いてくる頃か?」
「そうだな。そろそろだな」
 藤元先生が壁際の時計をちらりと見上げながら頷くと、佐上先生はあたしのそこに指先を擦り付けた。指をくいくいと押し付けられると、全身がビクビクしてしまう。ショーツの中が、そこだけ温泉に浸かっているみたいにとろとろになって行くのがわかる。
「やっ、あっあ……」
「ぐちょぐちょになってきたな」
 言いながら佐上先生がさっきよりも強めに指を押し付けた。爪で引っ掻くみたいにきゅっと弾かれて目の前にぱちっと花火が飛ぶ。
「やあぁっ!」
 びくんと震えた瞬間、先生の指がショーツの隙間から入り込んだ。二本の指でクリちゃんを挟むみたいにぬるぬるとなぞられて腰が揺れる。
「やあっ、あっ、ああぁっ!」
 ぬるんと佐上先生の指が入ってくる。ぐちゅぐちゅと音を立てて指が出入りする。さっきの、温泉みたいなとろんとした感覚がそこを中心にお腹の中に広がって行くような気がした。先生の手が一瞬でも止まると、耐えられないようなジリジリした感じがする。
「やっ、せんせ……」
 引き抜かれた指に思わず声を上げると、佐上先生はくすっと笑ったみたいだった。お尻からショーツが引き下ろされて、あっと思う暇もなく、先生の手がそこをぐいっと開いた。
「すごいな」
「やだっ。見ちゃ、やだっ」
 思わず振り返ろうとしたとき、さっきと同じに藤元先生の手があたしを押さえつけた。ぐいとあごをつかまれて上を向かされて唇をふさがれてしまう。
「ん、んんっ」
 タバコの味のする、ちょっと苦い唾液がトロリと流し込まれた。一瞬逃げようとしたけれど、分厚い舌にぬるぬると口の中を舐められると抵抗ができなくなる。上あごの歯の付け根に舌先を擦り付けるようになぞられるとなぜかびくんと身体が震えた。
 息ができなくなるようなキスをしながら藤元先生の手があたしの胸をつかんだ。胸の先端を指先できゅっとつままれるとあそこがひくっとする。それを待っていたように、佐上先生が指をつぷりと突き刺した。タイミングを微妙にずらしながらくちゅくちゅと奥まで差し込んでくる。
「んんっ! ふぅんんん……っ!」
 口の中と胸とあそこの三箇所から広がって行く痺れるような快感に、あたしはあっけなくイってしまった。




「あっ、はっ、は……」
 びくびく震えていた身体からがくっと力が抜けて、あたしはあぐらをかいた藤元先生のまさにその部分に頬を押し付けるようにして倒れ込んだ。高く上げたままのお尻からショーツがずるずると引き下げられて、そのまま足首から抜き取られていく。脱がされてるんだってわかってるけど、足腰が動かない。
「さすが女子高生だな。きれいなもんだ」
「や……あ、はっ」
 呟くような佐上先生の言葉と一緒にそこがくにっと指で開かれてしまった。全身に広がる痺れるような快感がすごすぎて、恥ずかしいとか考えるだけの余裕がない。くちゅっと指先で擦り上げられると声が出てしまう。
 もっと欲しい。もっと気持ちよくして欲しい。そんなことしか思い浮かばない。今のに比べたら、ひとりえっちなんて気持ちよかったことの入り口なんだってわかる。自分でするより先生にされるほうが断然すごくて感じちゃう。
「おまえ、どっちがいい?」
「どっちがってなぁ、おまえがこいつ気に入ったんだろ」
「じゃあまあ、お先に」
「おお」
 大きな手に持ち上げられてころんと身体をひっくり返されると、手首の鎖がちゃらりと鳴る。両手を頭の上に上げた万歳の格好で動けないように手首を抑えつけられた。そっと目を上げると手を押さえているのは藤元先生で、腰の辺りをまたぐみたいに覆い被さってきているのが佐上先生。そのままゆっくり、きれいな目が降りてくる。
「せん、せ……、んっ」
 唇を奪ったまま、先生の手は胸を柔らかく揉んできた。きゅっと乳首をつまんでねじるようにクリクリ転がされると、頭の中にぴしっと小さな電流が走る。
「あ、や……っ」
 はなれた唇があごから首をすうっと通って胸をぺろりと舐めた。摘まれた乳首の先っぽだけを尖らせた舌先を擦り付けられる。
「せんせぇ、あ、んっ、やぁ……ん」
 おっぱいをされるのも気持ちいいけど、でももっといいところをさわって欲しくて、無意識にひざをすり合わせてしまう。先生はあたしの言いたいことがすぐわかったみたいだった。右手でお腹をさわさわと撫でながらふとももまで降りて、そして内側にするんと入り込んだ。
 佐上先生の指があたしのそこを縦にゆっくりとなぞる。ぬるぬるした指がそこへ入り込んで行く。
「あ、はっ、ん、んん……っ」
 くちゅくちゅとえっちな音を立てて掻き回しながら、先生は別の指でボタンを押すみたいにクリちゃんを優しく突付いた。痺れるようなその快感に反射的に背が反り返る。身体の奥から押し出されるように変な声が出る。出てしまう。
「やあっ……んんっ、ひぃっ!」
 跳ねるように震えるたびちゃらりと鎖がなって、手首をつかんでいる藤元先生の力がちょっとだけ強くなる。押さえ付けられてあそこをさわられて気持ちよくて、でもそれを二人の先生に見られてると思うと余計に感じてしまう。 
「やっ、あっああっあああっ!」
 意識にヒビが入るような衝撃に、閉じたまぶたの裏がパチっと火花が散った。ぐいと指をねじ込まれると全身に力が入る。ガクガクと腰が揺れる。
「ダメ! もうダメ! や、あああっ!」
 あ、イく。イくイくイくぅ……!
「あっ、や、あぁ……」
 でもあとちょっと、と言うところで佐上先生の指がずるりと引き抜かれた。自分でも気付かないうちにあたしはひどく情けない声を上げてしまう。佐上先生がそんなあたしを見て、唇の端をきゅっと歪ませた。キレイで優しくてそしてイジワルな目で、襲われてるのに感じてるあたしを面白がるみたいにくすっと笑う。
「どうした、芝口」
 頭の上からかけられた声に首を回すようにして目を向けると、同じような顔で藤元先生も笑っていた。
 二人とも、あたしがイきかけてたことわかってるんだ。わかってて、わざとイく直前でやめたんだ。あたしのことからかって面白がってるんだ。
 でも、もう止まれない。痺れるような感覚が苦しくて、もっと欲しくて、息が焼けるようで――。
「やだっ! やめちゃ、やだっ」
 あそこがジリジリして我慢できない。
「おねがい、もっと――」
 思わず口から転がり出てしまった言葉に、佐上先生と藤元先生がびっくりしたみたいに顔を見合わせる。三秒ほどの沈黙のあと、二人の顔が薄笑いに変わった。
「――こんなに、効くもんなんだな」
「俺も、ここまでは初めてだ。女子高生にねだられると……クルな」
 ちょっといやらしい声で笑いながら、藤元先生は指のあいだに何かを挟んだまま右手を佐上先生に突き出した。
 薄ぺったい四角いもの。今まで本物をじかに見たことはなかったけど、それが何かくらいはわかる。どんなときに使うものなのかも知っている。ホントに最後までされちゃうんだって、一瞬逃げ出したくなったけど、でも。
「サンキュー」
 いつものクールな声で言いながら佐上先生はそれをきゅっと抜き取って、ひざ立ちするように上半身を起こしてあたしから離れた。
「このままだとやりにくくねーか?」
「そうだな。後ろのほうがいいな」
 短い会話で何かが決まったみたいで、頭の上で腕を押さえつけていた手が離れて背中を起こされた。手枷を固定していた南京錠がいったん外されたけれど、解かれたわけじゃなくて両手が身体の前から背中に回っただけ。
「これでどうだ?」
「ああ、いいな」
 ネクタイを引き抜いてシャツのボタンを上から二つ外した佐上先生が、あたしを見てくすっと笑った。涼しげでキレイな顔に、今の状況を忘れかけてしまう。
「それでこう。どうだ?」
「きゃあっ!」
「ああ、いいな。興奮するな」
 楽しそうに佐上先生はそう笑う。
 あぐらをかいた藤元先生のひざのあいだに座って、胸に頭をもたせかけるようにして座ったこの体勢は、背後から回ってきたごつい手で押さえつけるように脚を大きく開かされていることさえ除けば、藤元先生を座椅子替わりにリラックスしてるみたいなカンジだけど、でもっ!
「や、やだやだっ! 恥ずかしいよおっ」
「何言ってんだ、おまえは。これからもっと恥ずかしいことするんだぞ」
 耳元で低く笑う声がぺろりと耳を舐めた。
「ほら、見てみろ、あいつの。あんなぎんぎんにおっ勃ってんぜ」
 言われて目を向けた。寝転んでいたさっきまでよりも周りの状況がよく見える。見えてしまう。
 さっきから聞こえていた、カチャカチャとベルトを外す音とジッパーを下げる鈍い金属音の続きは、あたしに半分背中を向けるような俯いた体勢で、取り出したゴムをパンツのその辺りに持って行った佐上先生の姿だった。男性にしては色の白い佐上先生のとはとても信じられないような赤黒い男の人のそれが、ジッパーの隙間からにょきっと突き出していた。怖いくらい天井を向いたそれの表面に血管が浮いているのが見えた。
「やっ!」
 怖くてそれ以上は直視できなくて、思わず眼をそらした。天井に向けた視線に回り込んできた藤元先生があたしを見おろしてくすっと笑う。
「どうした、芝口」
「べ、べつに、なんでも――」
 どんなに隠しても声が震えてしまう。
 男の人のってあんなになってるんだ。あんなにおっきいんだ。あんなのが入っちゃうの? ホントに? タンポンだってちょっと痛いときあるのに、あんなおっきいのムリだよぉっ。
「なんだ、緊張してんのか? やめてって言っても今さら誰も聞かねーぞ?」
 耳から頬っぺたにかけてキスをしながら、ふとももから少しずれてきた指があそこでくちゅっと音を立てた。ぐぐっと入り込んできた指に、ちょっと忘れかけていた、でもさっきからずっと待ち望んでいた甘い痛みが背中に走る。クリちゃんをイジりながらぐちゅぐちゅと指を出し入れされると、痛いような苦しいような、でも圧倒的な気持ちよさがこみ上げてくる。
「あっ、あぁ……ん」
「ホント、可愛い声出すな、おまえ」
 靴下だけが残ったカッコで大また開きにされて、担任の先生に後ろからあそこをさわられてる。そんな恥ずかしい状況も忘れちゃうくらいの感覚に、じゅわっと音を立てて理性が蒸発して行く。
「おーおー、締まる締まる。指喰い締めてるぜ」
「あっ、あ、あああ……っ!」
 さわられているあそこが気持ちよくて、さわられていない胸がきゅうっと痛い。頭が破裂しそうなくらいに脳が膨らんできているような気がする。イく直前の、最高に気持ちよくて最高にもどかしいカンジに、知らず知らずのうちにガクガクと腰を振ってしまう。
 ――お願い、もっと……。
「イきそうか? イきたいか?」
 あたしの内心を読み取ったみたいに、低い声が囁いた。ざらっと音を立てて耳に舌が差し込まれる。軟骨に沿うようにゆっくりと舐められると背筋がぞわっとする。
「あ、んっ、せんせ……んんっ」
 首をねじるようにしてなんとか背後を振り返ると、真っ黒な目とぶつかった。まさに唇を奪うという感じに上から覆い被さるようにキスされて、でも受け入れてしまう。隙間から入り込んできた舌が歯の付け根や上あごの裏をくすぐる。どろっと流れてくる苦い唾液にも不思議なくらい嫌悪感がなくて、そのまま飲み込んでしまう。
「ん、ふ……んん……」
 そのとき、あたしの口を塞いだまま先生の指が一気に速度を上げた。クリちゃんをやわらかく指先で揉まれて身体に力が入る。ぎゅうっとつむったまぶたの裏の緑がかった黒い闇に線香花火みたいな小さな白い光がパチパチと出る。
 あ、もうイく、と思った瞬間。
「や、やああっ!」
 引き抜かれた指に抗議の声を上げたのとそこに別の指を感じたのは、ほとんど同時だったんじゃないかと思う。開かされたそこに何かが押し当てられる。ぬちゅっと音がしたような気もする。それが何かとか、これからどうなるのかとか、そんなことを考える時間の余裕なんて全然なくって。
「挿れるぞ」
 この状況からすれば、異常なくらいに落ち着いた佐上先生の声が一言だけ聞こえてきて、そして。
「あッ! んん、ああああーーッ!」
 ぐぐぐっと一気にねじこまれた熱いかたまりにその痛みに耐え切れず、あたしは絶叫した。

もどるもくじすすむ
inserted by FC2 system