マスカレイド 第二部
あいするいみは-5

「ほら、言ってみろ。どこが好きなんだ? どうされたい?」
「や、ん……」
 さっき留めたばかりのブラウスのボタンを白い指が一つずつ外して行く。隙間からするりと入り込んだ手のひらが、ブラの上から胸をつかんだ。力を入れたり緩めたりと、あたしをからかうように弄ぶ。指先でカリカリと頂点を引っかかれて、それだけで喘いでしまう。
「なんだ、武志じゃ物足りなかったのか。もうこんなになってるぞ」
 ブラカップの内側にもぐりこんだ指が乳首を軽く押さえた。指先でこねられる度にあそこがきゅうんとするのがわかる。早く欲しいって言ってるのがわかる。もう濡れてきてるのもわかる。
「や、せんせ、早くぅ……」
 恥ずかしいと思っても口をついて出てくる。だってさっき先生がそう言ったから。今日は言わないとしてもらえない。そういう設定みたい。
 自分の好きなようにするのが好きという、割とわかりやすい藤元先生とは違って、佐上先生はいろんなやりかたをする。『今日はこんな感じで』みたいに、その日の気分でいろいろと変えてくる。優しく抱いてくれる日もあれば、レイプみたいに乱暴にされることもある。
 でも、そのどれもが気持ちいい。本当に気持ちいい。だから、先生が本当はあたしをどんな目で見ているのかとか、どんなつもりで抱いてるのかとか、そんな些細なことは気にしない。気にしない、ことにしている。
「早く、なんだ? 何を早くして欲しい?」
「やだ、いじわる」
 いやいやと首を振っても薄い笑みを湛えた表情は変わらない。あたしが何を求めているかなんてとっくにわかっているくせに、してくれる気配は全然ない。どうやら、今日はあたしに恥ずかしいことを言わせるのが目的みたい。気持ちよくてぐちゃぐちゃになってるときならともかく、始める前に言わせられるって、一番苦手なパターンなんだけど。
「ここを、さわって……」
 泣きそうな思いで、それでもスカートの上からあそこの辺りを押さえると、先生はふんと嘲笑うように小さく笑った。
「さわって欲しいなら、脚を開け」
 突き放すように返ってきた冷たい声に背筋がぞくぞくする。お腹の奥がじんわりと熱くなる。キスして欲しいと思う。ううん、キスだけじゃなくって、もっとすごいことをして欲しい。いやらしいことをして欲しい。
 冷たくされてこんなふうに感じてしまうなんて、あたしってやっぱり変かも。そんなことをちらりと考えたりもするけど、でも感じちゃうのは事実で。
「はい、せんせ」
 先生の視線がそこに注がれているのを意識しながら、硬いひざの上に横座りしたまま、もぞもぞと肩幅くらいに脚を開くと、先生はきれいな眉をきゅっとひそめた。反応らしい反応はそれだけで、何も言ってくれない。やっぱりこの程度じゃダメみたい。もっとしないとダメみたい。
 足首をぱたぱたさせて学校指定の革靴を脱ぎ落としてから、三角座りするときのように先生のひざの上に足の裏を置いて、片方のひざをハンドルにもたせかけるようにして大きく脚を開いた。あたしはそれほどスカートを短くしているわけじゃないけど、それでも先生にはパンツが見えちゃってるんじゃないかと思う。
「先生……」
 じっと見上げると、満足げに笑いながら先生は手をスカートの上に置いた。
「ここと言うのは、ここか?」
 すうっと滑るように足のあいだにきれいな指先が滑り込んでくる。制服のスカートの上から爪先をこすりつけるようにカリカリと引っかかれる。
「や、ん」
 先生にさわられていると思うだけで、先生の指がスカートのプリーツのあいだに吸い込まれていく様子を見ているだけで感じるけど、でも、物足りない。ショーツだけならともかく、スカートが邪魔すぎ。
「や、せんせ」
「なにが」
 楽しげな含み笑いがあたしを見る。
「さっきも言ったな、芝口。どうして欲しいのか、ちゃんと言いなさい」
 その口元はやわらかくゆるんでるけど、目は笑っていない。底光りするような冷たい光があたしを嘲笑うように見つめる。突き刺さるような鋭さに心臓がどくんと不規則に跳ねる。
「直接、さわって欲しいんです」
 言いながらあたしは先生の手をつかんで持ち上げて、スカートの内側に置いた。
「ここです。ここを、さわってください」
「よしよし。よく言えたな」
 あたしの言葉に先生が目を細めて優しく笑う。それだけで心臓がのどの真ん中くらいまでどくりと跳ね上がる。すぐにゆっくりと元の位置に落ちてはくるけれど、どくどくとこめかみまでが疼いてくる。落ち着こうと何度もつばを飲み込んでも、先生の目を一瞬でも見てしまうとダメ。心臓が怖いほど全身にまで鳴り響いて、あたしってこのまま死んじゃうんじゃないかと思うくらい。
「じゃあ、さわってやろうな」
 こどもを褒めるように頭を抱き寄せて軽く頬にキスをしてから、先生の手はあたしの望みの場所へと吸い込まれて行った。繊細な指がショーツ越しにゆっくりと縦のラインをなぞる。その程度の物足りない刺激にもひくんと震えてしまう。
「あ……んっ」
 思わず身をくねらせると、あたしを見て先生はふふっと小さく笑った。唇の隙間から漏れた吐息のような笑みにぞくっとする。恥ずかしいくらいにとぷりとあふれてくる。ショーツの内側はもうぐちゅぐちゅだから、先生の指に少し力が入っただけでぬるりと隙間へ滑り込んでくる。
「あ、せん、せ……」
「気持ちいいか?」
 ゆっくりと素早くを繰り返しながら、先生の手があたしのそこを弄ぶ。どろどろになったショーツ越しにひだひだをなぞられると、ひくりと奥のほうがざわめく。もっと直接的な刺激が欲しいと、あたしの中の本能がねだる。
「はい、気持ちいい、です。でも……」
「でも、どうした?」
 薄い笑みを唇に浮かべたまま、先生はあたしに問い掛ける。どうして欲しいのかと訊いてくる。とっくにわかってるくせにと恨めしくも思うけど、でもちゃんと言えば先生はそのとおりにしてくれる。気持ちよくしてくれる。それがわかってるからあたしは恥ずかしい言葉を口にする。
「お願いです、先生。指、挿れて……んんんっ」
 あたしの言葉の途中で、キレイな指先がすっと布きれを避けてそのあいだへとずぶりと入り込んできた。
「あっ! ん、ん、は……っ」
 ぐちゅ、ぐちゅ、と深く差し込まれるたびに震えてしまう。もっと奥に欲しいから、腰を浮かせて突き出して先生の指を誘い込む。先生はあたしの望み通りに突き込んで、そしてかき回してくれた。
「あ、く……、んんっ!」
 気持ちよすぎて涙が滲んでくる。
「あ、せんせ……」
 見上げた先生のキレイな目が少しぼやけていた。先生の顔がちゃんと見えないのがもったいなくて手でごしごしと目をこすろうとしたとき、上げかけた手を押さえられた。それを不思議に思う暇もなく目元にキスが落ちてきた。目じりをてろりと舐めて、頬から首すじへと舌が降りてくる。あごの下辺りをちゅっと強く吸われる。そのあいだも一瞬も止まることなく、先生はわざとのようにぐちゅぐちゅ音を立ててあそこに指を突き立てる。
「はっ、あ……、あ、くぅんっ」
「スカートにまで垂れてきてるぞ。そんなにイイのか?」
 そう言って笑う佐上先生は、こんなことをしてるさいちゅうなのに嘘みたいに爽やか。あたしだけが一人で喘いで気持ちよくなってて、なんだか変だけど、でも先生の指にクリちゃんをぬるりと撫でられると、ひくひくとあそこが震える。
「気持ちいい、です。せんせの指、すごく気持ちい……あ、んっ」
「よしよし」
 先生は軽く頷くと、肩を抱き寄せていた右手の位置を変えた。きちんと先生に答えたご褒美なのか、ブラカップの中にもぐりこんできた手がさわさわと胸を撫でてくれた。こりこりになった乳首を指先でもまれるとあそこがきゅうんとする。
 気持ちいい。気持ちいい、けど、でも、もっと。
「どうした、芝口」
 薄い笑みを口元に浮かべた先生があたしを覗き込む。
「ああん、せんせ……」
 目だけで懸命に訴えても今日の先生は絶対に聞いてくれない。わかってるはずなのに、気付かないふり。知らないふり。
「お願い、せんせぇ……」
 はぁはぁと息を乱したまま身体を擦り付けてねだってみても、先生の目は無表情のままだった。藤元先生ならすぐにもしてくれるのに。あたしってやっぱり佐上先生の好みじゃないのかな?
「さっきも武志に散々突っ込んでもらってたんだろう。なのに、まだ欲しいのか?」
「欲しいです。せんせのが欲しいの」
 呆れ顔を見つめ返しながら、あたしと先生のあいだに挟まれたままだった左手で、そおっとその辺りを撫でてみた。涼しげな表情とはうらはらに、お腹の上に棒を置いたみたいなごりっとした感触が手のひらに返ってくる。
 なぁんだ。ホントは先生も興奮してるんだ。だったら……。
「ねぇ、せんせ。ください」
 困ったような目を見つめながらそこをさわさわと撫でて、返事も待たずにベルトに手を掛けた。

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