マスカレイド 第二部
あいするいみは-6

「ね、いいでしょ。せんせ」
 涼しげな瞳を蕩けるような思いで見つめながら、先生の腰に中央についた上品なバックルを外してベルトを引き抜いた。黒いボタンの隙間に隠れた小さなジッパーをつまんでゆっくりと下ろす。先生のそこはもうぱんぱんに膨れ上がっていて、細身のパンツのせいもあって、軽く押さえないとジッパーが下ろせないほど。さっきまで気付かなかったのが嘘みたい。
「ダメだって言ったらどうする?」
 普段のすまし顔が嘘みたいな目で先生が笑う。
「ダメって言ったって、ダメー」
 すっかり男の人の顔になった先生はいつも意地悪だけど、でも今日の設定ではあたしが言ったら先生はあたしの言う通りにしないといけないはずだから、大丈夫。強気に出ていい。欲しいものを欲しいって言えばいい。そうすれば先生はくれる。気持ちよくしてくれる。
「本当に困ったコだな」
 ふふっと目を細めるように笑いながら、先生はあたしの腰をぐいと抱き寄せた。強く回ってきた腕があたしを先生のそこへ押し付ける。その力に応えて、普段よりすごい角度でジッパーの隙間から飛び出してきているトランクスの中の硬いのをきゅっと握る。手のひらをこすりつけるようにゆっくり撫でる。先っぽの二段になった部分を親指と人差し指でつまむようにして布越しに優しくねじると、先生が小さく息を詰まらせた。
「こんないやらしい生徒がうちの学校にいるなんて、先生は知らなかったぞ」
 言いながら、先生は腰を抱いていた手をすうっと上げて、胸をぎゅっとつかんだ。反撃するようにブラの中に指先を滑り込ませながら長く伸ばした舌で耳をてろりと舐める。ふうっと息を吹きかけられて震えるあたしを見て笑う。
「ひどーい。先生があたしをこんなふうにしたくせに」
 こんな状況でこんなことを言う佐上先生なんて、あたししか知らないはず。先生が実はこんなにえっちだなんて、学校中の女の子みんな、誰一人知らないはず。そんなふうに考えると、表現のしようのない優越感がひたひたと胸に満ちてくる。
「せんせ、ねぇ……」
 根っこの方を握ってこすりながらトランクスをずらすと、怖いくらいぱんぱんに腫れたそれが飛び出してきた。天を指すように突き上げた先っぽがぬらりと光っていた。
「ねぇ、して。先生のコレで、気持ちよくして」
 細い糸を引くとろりとしたぬるぬるを、先っぽ全体に塗り広げる。指先で真ん中のくぼみを縦になぞるたび、先生はぴくっぴくっとあたしの手の中で震える。右手の指で丸くぷくりと脹れた先っぽに円を描きながら、左手で段になった部分をくりくりする。
「本当に、しょうがないな」
 気持ちよさそうに息を乱しながら先生は小さく頷いてくれた。
 あたしにねだられて仕方なくって態度はやっぱり変わらないけど、でもここをこんなにしてるんだから、えっちしたいのだけは確か。あたしを呼び出したのは先生だし、ここに車を停めて、そういう話の流れからキスしてくれたのも先生のほうからだし。
 だからってあたしを好きとか自惚れないから、先生があたしのことを抱きたいって、そういう対象だって思ってくれたらいいなって思う。特別に何かを望んでるわけでもなんでもなくて、このときだけそういう目を向けてくれたら、それで充分なんだ。
「よっと」
 あたしを抱きしめたまま上半身だけを起こすと、身体をねじるように思いっきり手を伸ばして、先生は助手席のダッシュボードの取っ手を引っ張った。ばくんと大きく口を開けた空間にいくつかの書類が積まれていた。その上の銀色に光る金属製の箱を先生は軽く指先で引き寄せた。それは、先生たちみんながよく持ってる、自分専用のチョーク入れにすごく似てた。
「それ、なぁに?」
 あたしの問いかけに意味ありげに細めたまなざしをちらりと一瞬向けてから、先生は黙ったまま蓋を片手で開けた。
「わかるだろう?」
 くすりと笑う先生が見せてくれた中には、平べったい四角いものがお行儀よく並んでいた。
「え、っと……」
 それは、いわゆる避妊具。コンドーム。
 でもコンドームって表現はあたしも含めてみんななんとなく恥ずかしいみたいで、だからゴムって言う。さすがに自分で買ったことはないけど、でもドラッグストアに普通に並んでるし先生たちはあたしとするときに当たり前のように出すし見慣れてるけど、でも改めて見せられると、どこか気恥ずかしいのも確か。
「ほら」
 なんとなく直視できなくて目をそらしたのに気付いたのか、きれいな指先は一番上のをすうっとつまんであたしの目の前にぶらさげた。反射的にそれを手のひらに受け取って、でもどうしていいかわからない。助けを求めて顔を上げても、落ちてきた前髪に上が少し隠れた涼しげな目は、楽しそうにあたしの反応を見てるだけ。
「これ……」
「開けかたはわかるか?」
 からかうような声音が優しく降ってくる。ううん、からかってるんだと思う。楽しんでるんだと思う。その証拠……になるのかな、薄くグロスを塗ったみたいな唇の端っこが意地悪なカンジに歪んでた。でもそんなちょっと悪そうな雰囲気もすごく素敵で、だからなんでもないように訊き返す声が震えてしまう。
「あたしが開ける、の?」
「開けなさい」
 そっけなく頷かれて仕方なく、お菓子のパッケージを開けるみたいにギザギザになった端っこを両手の指先でつまんでひねった。思っていたよりも硬くて開けにくい。まあ、ポテチの袋みたいに簡単にぱくっと開いて飛び出したりしても困るだろうし、頑丈に作られてるんだろうな。
「えっと……」
「取り出す」
「はい」
 パッケージの上を端っこまで切ったあたしがそのままで固まっていると、有無を言わさないって声が次の行動を指令した。仕方なく、言われるままにおそるおそる開いた口に指を差し込んで、ぬるりとした感触に滑りそうになりながら指先に引っ掛けた。
「出しました」
「じゃあ、つけて」
 つけて、って……。
 びっくりして振り仰ぐと、先生はあたしの顔を見てからくっとのどの奥で低く笑った。座席の下に右手を入れて、ざらざらと音を立てて運転席を一番後ろまでスライドさせてから、左手にパッケージを右手の指先にゴムをつまんだまま固まったあたしを優しい目で見つめた。
「降りて、こっちを向きなさい」
 毒を流し込むように優しく囁かれて、言われるがまま広くなった運転席とハンドルのあいだに身体を滑り込ませた。ぺたりと座り込んで向き直ると、ちょうど目の前に先生のがあった。赤くて黒くて、怖いくらいに表面に青い血管が浮いてた。ぷうっと腫れたやわらかな先端がぬるぬると光ってた。それ以上直視することができなくて俯くように目をそらした。
「握って、先に当てて、そのまま下まで滑らせればいい」
「……はい」
 後頭部に降りかかってきた言葉に素直に頷いた。とんでもないことを言われてるってのはわかってるのに、催眠術にかかったようにそのとおりにしてしまう。
「つけます、ね」
 パッケージをスカートの上に置いて、左手を先生のに手を伸ばした。きゅっと握ると、びくっと震えるように大きく揺れる。びっくりして思わず手を放してしまってから、おそるおそるもう一度握り直した。ぎりぎり指が回るほどのそれは強く握ると反発するようにぐうっと大きくなる。学校で普段に見かける、近寄りがたいほどにキレイな先生にこんなのがあるなんてとても信じられない。あんなスッキリしたスーツ姿のどこに隠してるんだろうって思うと不思議。
 なんか、恥ずかしい――。
 自分がものすごく変なことをしているみたいでドキドキしながら、先生の先端に丸まったゴムをぴたっと当てた。そのまま根っこの方まで指を流して全体をすっぽり覆う。
「えーっと……?」
「ちゃんとできたね。いいコだ」
 これでいいのって大きく脚を開いた体勢で運転席に座っている先生を見上げると、あたしを見おろすキレイな目が細くなっていた。軽く頷いて、唇の端を緩めるように笑って頭を撫でてくれる。
「じゃあ次だ。ひざをまたいで、こっちへおいで」
「こっちって……」
 褒められて喜んだのもつかのま、先生は次の課題を出した。先生の言葉の意味がわからず困るあたしに優しい笑みが返ってくる。
「上になって自分で挿れなさい」
 えっと、それって、いわゆる騎乗――?
「できるだろう?」
 楽しげに目を細めたその表情に、イヤなんて言えない。
「え、と、じゃぁ……」
 低い天井に頭を打たないように気をつけて立ち上がって、先生の肩の辺りにそっと手のひらを乗せた。
「よいしょ、っと」
 この状況にしては色気のない掛け声をかけながら、ゆっくりと腕に体重をかけて先生のひざの上に登った。スカートの影に隠れた先生のそれを手探りで探して、指先に触れたそれを手のひらに握り込んで、もう少し腰を上げて、そしてゆっくりとあそこに当てた。
「じゃあ、えっとその……挿れます」
「ああ」
 そっけなく頷きながら、先生はスカートのすそをさりげない仕草で軽くつまんだ。ウェストの辺りまで一気にめくり上げてスカートの中に視線を落としてくる。涼しげな目にいつもと少し違う色を浮かべて、透き通るようにふっと笑った。
 さあ。
 声にならない声に急かされてごくりとつばを飲んだ。先生がスカートの中をじっと見つめてる。そこがどんな状態になってるのかって考えると、どうしようもないくらいに恥ずかしいけど、でもここでどんなにお願いしても許してくれないってわかってるし。
「ん、んんん……っ」
 もうトロトロになっちゃってるあそこにゴムの感触をぬるっとこすりつけると、先生のがびくんと大きく震えた。少し体重をかけただけで意思を持っているみたいにぐっと入ってくる。
「ん、ん、んんん……っ」
 ゆっくり腰をおろして行くと、骨が入っているみたいに硬い先生のそれが、周囲を押し広げるように侵入してきた。ずずっと強くこすりつけられると、ぞくぞくするような快感が背中を這い上がってきて、勝手に声が出てしまう。
「あ……、はい、り、ました」
 ぺたんと先生のふともも上に座って肩で息をした。身体のどこかに少し力を入れただけでも先生のが入ってる奥がひくひくする。気持ちいい。気持ちいいけど、ちょっと物足りない。
「あ……せんせ……」
 佐上先生は藤元先生より少し背が低い。多分五センチくらいの差があると思う。それでもチビなあたしからすれば、間近で見上げるときの角度がちょっと違うだけ。先生を頭のてっぺんを見ることなんて滅多にないかも。そんなことをどこか端っこの方で考えながら抱きつくように先生の肩に両手を乗せた。
「せんせ、気持ちいい……?」
「ああ」
 いつも通りそっけなく頷く先生の首に抱きつくように腕を回して腰をくねらせた。きゅっと力を入れると中にいる先生のがびくっと震えた。それがちょっとおもしろくて、お尻を擦り付けるように上半身を大きく揺らした。何度かそれを繰り返していると、先生が溜息をつくように小さく息を詰まらせた。

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